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採用コラム採用マーケティングとは?採用ファネルを設計して「選ばれる企業」になる実践ガイド

「求人を出しても、欲しい人材からの応募が来ない」 「母集団は集まるのに、選考や内定承諾につながらない」 採用の現場では近年、こうした声を耳にする機会が増えています。労働人口の減少や採用活動の早期化、候補者の情報収集行動の変化を背景に、従来の「募集して、待って、選ぶ」採用が通用しにくくなっているためです。

こうした環境で注目されているのが、マーケティングの考え方を採用に転用する「採用マーケティング」です。ただ、検索して出てくる情報の多くは概念の説明にとどまり、「実際の採用現場で何が起きているのか」「何から手をつければよいのか」までは見えてきません。

本記事では、採用代行(RPO)専業として800社以上を支援してきた当社が現場で観測してきた一次情報をもとに、採用マーケティングの基本から、採用ファネルの設計、つまずきやすいポイントまでを整理します。「数を集める採用」から「選ばれる仕組みをつくる採用」へ。その転換を考えるための実践ガイドとしてご活用ください。

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採用マーケティングとは?従来の採用手法との違い

「採用マーケティング」という言葉を耳にする機会は、ここ数年で確実に増えています。ただ、その捉え方は人によって幅があり、「ナビ媒体以外の手法のこと」「採用広報のこと」といった理解で語られている場面も少なくありません。言葉だけが先に広がり、実際に何をすることなのかが曖昧なまま使われている状況があります。

採用マーケティングを正しく理解するうえで、まず整理しておきたいのは次の点です。

  • 採用マーケティングとは何を指すのか
  • 従来型の採用と何が本質的に違うのか
  • 「採用ブランディング」とどう区別すればよいのか

まずは、この前提から押さえていきます。

採用マーケティングの定義(マーケティング思考を採用に転用)

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方やフレームワークを採用活動に転用するアプローチのことです。

一般的なマーケティングでは、「誰に・何を・どのように届けるか」を設計し、顧客が商品を認知してから購入に至るまでのプロセス全体を最適化します。この「顧客」を「候補者」に置き換えたものが採用マーケティングです。

具体的には、自社が採用したい人物像(ターゲット)を定め、その人がどこで情報に触れ、何を知れば興味を持ち、どんな体験をすれば応募・入社に至るのかを一連の流れとして設計します。求人を出して応募を待つのではなく、候補者の心情と行動の変化に沿って、企業側から働きかけの仕組みをつくる考え方だといえます。

重要なのは、採用マーケティングが特定のツールや媒体を指す言葉ではない、という点です。ダイレクトリクルーティングやSNS発信は手段の一つにすぎず、それらを「誰に・なぜ・どの順番で使うのか」という設計こそが採用マーケティングの本体です。

従来型採用(待ちの採用)との本質的な違い

従来型の採用活動は、求人媒体に掲載し、応募を待ち、集まった候補者の中から選ぶ、という流れが基本でした。いわば「待ちの採用」であり、企業側の関心は「どう集めるか」「どう選ぶか」に置かれてきました。

一方、採用マーケティングの出発点は「どう選ばれるか」です。候補者が複数の企業を同時に比較するのが当たり前になった今、企業は選ぶ側であると同時に、選ばれる側でもあります。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

  • 起点の違い:従来型は「応募が来てから」が勝負。採用マーケティングは「応募の前」から候補者との関係づくりが始まる
  • 対象の違い:従来型は今まさに就職・転職活動をしている顕在層が中心。採用マーケティングは、まだ動いていない潜在層まで視野に入れる
  • 評価指標の違い:従来型は応募数・母集団の規模を重視。採用マーケティングは、応募から選考・内定承諾への移行率や入社後の定着まで含めて成果を測る

特に三つ目の「指標の違い」は、現場での実感を伴いやすいポイントです。母集団の数がいくら増えても、その先の選考につながらなければ採用成果には結びつきません。「数を集める」から「届けたい人に届け、動いてもらう」への転換が、本質的な違いだといえます。

採用ブランディングとの違い・位置づけ

採用マーケティングと混同されやすい言葉に「採用ブランディング」があります。両者は重なる部分も多いのですが、役割は異なります。

採用ブランディングは、「この会社で働きたい」と思ってもらえるイメージやコンセプトをつくり、継続的に発信していく活動です。企業の価値観・文化・働く環境を言語化し、認知やイメージの土台を築くことに重心があります。

一方、採用マーケティングは、認知から興味、応募、選考、内定承諾までのプロセス全体を設計し、各段階の数値を見ながら最適化していく活動です。

あえて整理するなら、ブランディングは「何者として認知されるか」をつくる土台であり、マーケティングはその土台の上で「候補者にどう選考活動に進んでもらうか」を設計する仕組みです。ブランディングで定めたコンセプトを各選考プロセスに落とし込み、マーケティングの視点で移行率を検証する。両者は対立するものではなく、組み合わせて初めて機能します。

レジェンダ担当者のコメント

支援の現場で率直に感じるのは、「採用マーケティング」という言葉の広がりに対して、企業の体制がまだ追いついていないということです。多くの企業では、採用チームと広報・ブランディングの部署が分かれています。そのため、候補者の心情変化に合わせた情報発信の設計をご提案しても、「なるほど、ただこれはどちらかというと広報の領域ですね」という反応になり、採用チームだけでは意思決定できないケースが少なくありません。マーケティングの話題が、採用の会話に直接リンクしていないのです。

一方で、変化も確実に起きています。象徴的なのは、クライアントとの定例レポートで見る指標です。以前はプレエントリー数や母集団の規模が中心でしたが、最近は「インターンシップの予約は増えているか」「選考にきちんと乗っているか」という移行率を一緒に見るお客様が増えました。「欲しい人材はここなのに、なぜ来ないのか」を議論すると、打ち出し方の課題に行き着く。採用マーケティングを導入した企業で最初に変わるのは、施策よりもまず「何の数字を見るか」だと感じています。

なぜ今、採用マーケティングが必要なのか

採用マーケティングが注目される背景には、採用環境そのものの構造的な変化があります。「採用が難しくなった」という話は以前から語られてきましたが、ここ数年の変化は質が異なります。

ポイントは次の3つです。

  • 労働人口の減少により、候補者の獲得競争が恒常化していること
  • 求職者の情報収集行動が大きく変わっていること
  • 顕在層へのアプローチだけでは必要な人材に届かなくなっていること

それぞれ見ていきます。

少子高齢化・労働人口減少による採用競争の激化

日本の生産年齢人口は1990年代半ばをピークに減少を続けており、今後も回復の見込みは立っていません。新卒採用では大卒求人倍率が学生優位の水準で推移し、中途採用でも有効求人倍率の高止まりが続いています。

つまり、候補者の数より企業の募集の方が多い「売り手市場」が、一時的な景気変動ではなく構造として定着しているということです。

この環境では、同じ候補者に複数の企業が同時にアプローチします。条件面だけで比較されれば、知名度や待遇で勝る大手に流れやすくなります。「求人を出せば応募が来る」前提が崩れた以上、自社が誰に・何を・どう届けるかを設計しなければ、必要な人材との接点そのものが生まれにくくなっています。

求職者の情報収集行動の変化(SNS・口コミ・採用サイト)

求職者の情報収集の仕方も、この数年で大きく変わりました。

かつては、ナビサイトや企業の採用ページが情報収集の中心でした。現在は、SNSや動画、口コミサイト、現職社員・退職者の発信など、企業がコントロールできないチャネルを通じて候補者が企業を知る場面が増えています。

特に新卒採用では、SNSや動画が「企業を知る最初のきっかけ」として機能するようになりました。企業説明会より前の段階で、候補者の中の印象がある程度形づくられているということです。

また、口コミやリアルな体験談が重視されるようになった結果、企業側の公式情報と候補者が実際に得る情報との間にギャップがあれば、それ自体が不信感につながります。情報の出し方を設計しないまま発信量だけを増やしても、候補者には響かない時代になっています。

転職潜在層へのアプローチが必要になっている理由

採用ターゲットを「今まさに活動している人」に限定すると、その母数は年々細っていきます。顕在層は各社のスカウトや求人広告が集中する激戦区であり、待遇競争になりやすい領域です。

そこで重要になるのが、今すぐの転職・就職は考えていないものの、良い機会があれば検討したいという「潜在層」です。潜在層はまだどの企業とも比較検討を始めていないため、早い段階で接点を持ち、自社への理解と興味を育てておくことができれば、活動を始めたときの第一想起を取れる可能性が高まります。

ただし、潜在層には求人広告は刺さりません。「いま応募してください」というメッセージではなく、事業や働く人への興味を起点とした情報提供が必要であり、まさにマーケティングの発想——認知から興味への態度変容を設計する考え方が求められます。

レジェンダ担当者のコメント

「以前と明らかに変わった」と現場で実感した転換点は、コロナ禍です。採用活動が一気にオンライン化されたことで、インターンシップの開催ハードルが大きく下がりました。それまでは会場を押さえて対面で実施するなど、それなりの準備が必要でしたが、「オンラインなら意外とできる」となった瞬間、企業側の早期化に一気にドライブがかかりました。

コロナ前は一部の外資系などに限られていた早期化が、業界を問わず「どの企業も」という状態になりました。ただ、その歪みも出ています。母集団形成を早めることばかりに意識が向かい、動機付けや内定後のグリップといった根本の部分が追いつかない。結果として内定辞退が増え、「そもそもの採用力が上げられていない」という課題が表面化している企業が目立ちます。

だからこそ、ターゲティングの重要性が増しています。「誰を採りたいのか」「誰に何を届けたいのか」がぼんやりしたまま広く投げかけても、確かにプレエントリーは入ってきますが、その先のインターン予約や選考に移行しません。学生側から見れば、同じようなインターンシップが並んでいるだけでは、有名な企業に流れてしまいます。クリックしてくれるだけの「数」を増やしても、欲しい人材の母集団にはならない——この実感が、採用マーケティングが必要とされる現場のリアルだと思います。

採用マーケティングの核心——採用ファネルの設計

採用マーケティングの中核にあるのが、「採用ファネル」という考え方です。手法やツールの話に入る前に、まず候補者がどんな段階を経て入社に至るのかを構造として捉えることが、すべての打ち手の前提になります。

このセクションでは、次の流れで整理します。

  • 採用ファネルとは何か
  • 各ステージで何が起きているかをどう把握するか
  • 「どこが詰まっているか」によって打ち手がどう変わるか

採用ファネルとは(認知→興味→検討→応募→選考→内定承諾)

採用ファネルとは、候補者が企業を知ってから入社に至るまでのプロセスを、段階ごとに整理したフレームワークです。一般的には、次のような段階で捉えます。

  • 認知:企業の存在を知る
  • 興味:事業や働き方に関心を持つ
  • 検討:他社と比較しながら、応募するかを考える
  • 応募:エントリー・選考参加を決める
  • 選考:面接などを通じて相互理解を深める
  • 内定承諾:入社を意思決定する

ファネル(漏斗)という名前の通り、段階が進むごとに人数は減っていきます。認知した人の全員が興味を持つわけではなく、興味を持った人の全員が応募するわけでもありません。

重要なのは、この「減り方」を段階ごとに数字で捉えることです。全体の採用結果だけを見ていては、どこに課題があるのかは分かりません。

ファネルの各ステージで何が起きているかを把握する

ファネルを設計したら、次は各ステージの実態を把握します。具体的には、ステージ間の移行率を確認していきます。

たとえば新卒採用であれば、プレエントリーからインターンシップ予約への移行率、インターン参加からエントリーシート提出への移行率、といった形です。中途採用であれば、書類選考通過から面接実施への移行率、面接から次選考・内定承諾への移行率などが該当します。

このとき注意したいのは、「数」と「率」を分けて見ることです。プレエントリーの数が増えていても、その後の移行率が低ければ、集まっているのはターゲットではない可能性があります。逆に、母集団は小さくても移行率が高ければ、届けたい層にメッセージが届いているサインです。

各ステージの数字は、媒体管理画面・採用管理システム(ATS)・イベントアンケートなどに分散していることが多く、まずはそれらを一つの流れとしてつなげて見える化することが出発点になります。

どのステージが詰まっているかで打ち手が変わる

ファネル分析の価値は、「どこが詰まっているか」によって、打つべき手がまったく変わる点にあります。

  • 認知・興味で詰まっている場合:そもそも接点が足りないか、打ち出すメッセージがターゲットに合っていない。チャネルの見直しや訴求内容の再設計が必要
  • 応募・選考移行で詰まっている場合:興味は持たれているのに行動につながっていない。動機付けのコンテンツや選考体験の改善が打ち手になる
  • 内定承諾で詰まっている場合:最後の意思決定を支える材料が不足している。内定者フォローやクロージング設計の強化が求められる

よくある失敗は、詰まっている場所を特定しないまま「応募が少ないから母集団を増やそう」と入口の施策だけを積み増すパターンです。詰まりが中間や出口にある場合、入口を広げても歩留まりの悪さが拡大するだけで、コストばかりが増えていきます。

まず詰まりを特定し、そこに合った打ち手を選ぶ。この順番を守るだけで、採用施策の精度は大きく変わります。

レジェンダ担当者のコメント

支援先のファネルを見ていて、最も詰まりやすいポイントは新卒と中途で明確に違います。新卒で一番詰まるのは、インターンシップから本選考への移行、いわゆるエントリーシートの提出率です。インターンシップには、それなりに参加してくれます。ただ、その後の早期選考でエントリーシートを案内しても反応がありません。以前は「早期選考特別パス」が特別な施策として機能していましたが、今はどの企業もやっているので、もはや特別ではなくなりました。この傾向は年々強まっていると感じます。

中途の場合は、もっと手前です。エージェントから紹介があっても、適性検査を受けてもらえないケースです。一次面接のキャンセルも体感では3〜4割に達するケースがあり、そこで離脱してしまいます。背景には売り手市場で(エージェントの営業マン1名あたりが担当する顧客数が増加傾向)エージェント側も厳選して紹介する余裕がなく、選考に乗った後のフォローも最終面接が近づくまでは手薄になりがち、という構造があります。だからこそ、見るべき数字を変えるだけで打ち手が変わります。

ある新卒採用のお客様との定例レポートでは、プレエントリー数ではなくインターン予約率・選考移行率を主指標に置き換え、「欲しい層がなぜ次に進まないのか」を毎回議論するようにしました。媒体やチャネルごとの母集団データを連携いただいて分析し、どのチャネルが効果的かの示唆を出し、イベント後のアンケートも、回収して終わりではなく回答内容を分析し、セミナーの内容そのものを変更しました。こうした地道なファネルの運用が、結果的に「集まるけれど決まらない」状態からの脱却につながっています。

採用マーケティングの4つの主要手法

採用ファネルの全体像を押さえたうえで、次は具体的な手法を見ていきます。採用マーケティングの文脈でよく挙げられるのは、次の4つです。

① 採用ブランディング(EVP・採用サイト・SNS発信)
② ダイレクトリクルーティング(スカウト・ヘッドハンティング)
③ リファラル採用(社員紹介・口コミ拡散)
④ コンテンツマーケティング(採用記事・インタビュー・動画)

ここで先にお伝えしたいのは、「“どれか一つをやれば成果が出る”という手法は存在しない」ということです。それぞれの手法がファネルのどの段階に効くのか、自社のターゲットと採用要件に合っているのかを見極めたうえで、組み合わせて使うことが前提になります。

① 採用ブランディング(EVP・採用サイト・SNS発信)

採用ブランディングは、ファネルの入口である「認知」「興味」の段階に効く手法です。

中核となるのがEVP(Employee Value Proposition)、つまり「この会社で働くことで得られる価値」の言語化です。給与や福利厚生といった条件だけでなく、事業の意義、成長機会、組織文化など、自社ならではの価値を整理し、採用サイトやSNSを通じて一貫したメッセージとして発信していきます。

注意したいのは、ブランディングは即効性のある施策ではないという点です。発信を始めてすぐに応募が増えるものではなく、候補者の中に「あの会社」という認知が育つまでには時間がかかります。短期の成果を求める施策とは分けて、中長期の土台づくりとして位置づけることが大切です。

② ダイレクトリクルーティング(スカウト・ヘッドハンティング)

ダイレクトリクルーティングは、企業側から候補者に直接アプローチする手法です。スカウト型のデータベースサービスやヘッドハンティングがこれにあたり、「待ち」から「攻め」への転換を象徴する手法として、新卒・中途を問わず広がっています。

最大の特徴は、まだ自社を認知していない層、転職活動を本格化させていない潜在層にも接点をつくれることです。一方で、スカウト文面の作成や候補者の選定には相応の工数がかかり、「導入したものの運用が回らない」という声も聞かれます。

また、サービスごとに登録している候補者の層は大きく異なります。どの媒体を選ぶかによって成果が変わる手法であり、「ダイレクトリクルーティングをやるか・やらないか」ではなく「どのサービスを・誰に向けて使うか」が問われます。

③ リファラル採用(社員紹介・口コミ拡散)

リファラル採用は、自社の社員からの紹介を通じて候補者と出会う手法です。

マーケティングの観点では、社員は「既存顧客」にあたります。自社で働く価値を実感している社員からの紹介は、信頼性の高い口コミとして機能し、カルチャーマッチした候補者と出会いやすく、定着率も高い傾向があるとされています。採用コストを抑えられる点も魅力です。

ただし、リファラル採用は「制度をつくれば紹介が生まれる」ものではありません。社員が自社を勧めたいと思える状態、つまり従業員エンゲージメントが土台にあって初めて機能します。紹介インセンティブの設計や依頼の仕方など運用面の工夫も必要で、立ち上げから軌道に乗るまでに時間がかかる手法だと理解しておく必要があります。

④ コンテンツマーケティング(採用記事・インタビュー・動画)

コンテンツマーケティングは、社員インタビュー・仕事紹介記事・動画・ブログなどのコンテンツを通じて、候補者の企業理解と志望度を育てていく手法です。

ファネルでいえば「興味」から「検討」「選考」の段階、つまり接点を持った候補者を次の行動へ動かす中間領域に効きます。求人票だけでは伝わらない仕事のリアルや働く人の姿を伝えることで、応募の質や選考への移行率の改善が期待できます。

SNSや動画に慣れた世代にとって、テキストの会社案内よりも、いつでも気軽に見られるコンテンツの方が受け取りやすいという側面もあります。一度つくったコンテンツは繰り返し使える資産になるため、運用を続けるほど効果が蓄積していく点も特徴です。

レジェンダ担当者のコメント

手法ごとの効果について率直に言うと、魔法の杖はありません。たとえばダイレクトリクルーティングも、サービスによって登録者層がまったく違います。各社の情報を集めて比較していくと、「この媒体は大手なら戦えるが、中小企業ではあまり勝ち目がない」といった向き不向きが見えてきます。手法そのものの良し悪しではなく、その手法の中でどの媒体・サービスが自社のターゲットに合っているかを見極めることが重要です。

そして「この採用ならダイレクトリクルーティングだけでいける」というものはほぼありません。ダイレクトリクルーティングとナビ媒体、といった組み合わせで設計しないと厳しいのが実態です。リファラル採用は、考え方としては良いのですが、やってみて成功している会社は少ない印象です。もう少し詳しくお伝えすると、リファラル制度そのものは導入している企業は多いものの、実際に紹介として上がってくる数が少ないなどの理由から、有効な母集団形成施策にまで昇華しきれていない状況が多く見受けられます。背景として、リファラス採用は全社的な協力が必要で工数がかかるため他の母集団形成施策とのバランスから注力が難しいという特徴が挙げられます。

一方で、コンテンツマーケティングには可能性を感じています。ある専門商社の支援では、学生のマイページ上で月1回、職種理解などのコンテンツを定期配信したところ、面接での変化が顕著でした。質問への受け答えに企業理解がにじみ、質疑応答では学生側から踏み込んだ質問が出るようになりました。候補者は「調べてくれるだろう」と期待しても調べません。こちらから情報をきちんと渡す設計が、結果的に選考の質を変えるのだと実感した事例です。

採用マーケティングの実践ステップ【6段階】

ここからは、採用マーケティングを自社で実践していく手順を6つのステップで整理します。

STEP1|採用ペルソナの設計
STEP2|候補者接点(タッチポイント)の棚卸し
STEP3|自社の魅力(EVP)の言語化
STEP4|チャネル設計と情報発信
STEP5|ファネル指標(KPI)の設定と計測
STEP6|データをもとにした継続改善(PDCA)

大切なのは順番です。チャネルや発信(STEP4)から着手したくなりますが、誰に届けるか(STEP1)と何を伝えるか(STEP3)が定まっていない発信は、どれだけ量を増やしても成果につながりにくくなります。

STEP1|採用ペルソナの設計(誰に届けるか)

最初に行うのは、「誰を採用したいのか」の具体化です。

ターゲットを「コミュニケーション能力が高い人」のような抽象的な言葉で定義すると、関係者ごとに解釈がずれ、施策の軸がぶれます。経験・スキルだけでなく、価値観、転職・就職で重視すること、普段どこで情報を得ているかまで踏み込んで、一人の人物像(ペルソナ)として描きます。

このとき、理想を盛り込みすぎないことも重要です。現実に存在しないスーパー人材をペルソナにしてしまうと、すべての施策が空振りします。実際に自社で活躍している社員を参考に、実在しうる人物像として設計するのが現実的です。

STEP2|候補者接点(タッチポイント)の棚卸し

次に、ペルソナが自社と出会ってから入社に至るまで、どこでどんな接点があるのかを洗い出します。

求人媒体、採用サイト、SNS、説明会・イベント、スカウトメール、面接、内定者フォロー。接点は採用プロセスの随所に存在しますが、それぞれが個別に運用され、全体としてどんな体験になっているかを誰も把握していないケースは少なくありません。

接点を時系列で並べてみると、「この段階で候補者が知りたい情報を渡せていない」「接点と接点の間が空きすぎている」といった抜けが見えてきます。新しい施策を足す前に、まず今ある接点を棚卸しすることが先です。

STEP3|自社の魅力(EVP)の言語化

接点が整理できたら、そこで何を伝えるのか——自社の魅力を言語化します。

ポイントは、「自社が伝えたいこと」ではなく「ペルソナが知りたいこと・響くこと」から逆算することです。事業の安定性が響く人もいれば、裁量や成長環境が決め手になる人もいます。ペルソナの価値観と自社の実態が重なる部分こそが、打ち出すべきEVPです。

また、良い面だけを並べた魅力は、入社後のギャップを生みます。大変さも含めて誠実に言語化した方が、結果的にマッチ度の高い応募につながります。

STEP4|チャネル設計と情報発信

伝える内容が決まったら、どのチャネルで届けるかを設計します。

判断基準はシンプルで、「ペルソナがその情報に触れる場所はどこか」です。若手層ならSNSや動画、専門職ならその領域のコミュニティや勉強会、潜在層ならスカウトやオウンドメディア、といった形で、ターゲットの情報行動に合わせて選びます。

このとき、ファネルの段階とチャネルを対応させて考えると整理しやすくなります。認知をつくるチャネルと、検討を深めるチャネルは別物です。一つのチャネルにすべてを盛り込まず、段階ごとの役割分担として設計します。

STEP5|ファネル指標(KPI)の設定と計測

施策を動かす前に、何をもって成果とするかを決めます。

ここで重要なのは、応募数や母集団の規模といった「入口の数」だけをKPIにしないことです。プレエントリーからイベント参加への移行率、応募から選考参加への移行率、内定承諾率など、ファネルの段階ごとの指標を置き、どこで候補者が離脱しているかを追えるようにします。

データの取得元はばらばらです。媒体の管理画面、採用管理システム、イベントアンケート。これらを定期的に集約し、一つのファネルとして見られる状態をつくることが、計測の実務になります。

STEP6|データをもとにした継続改善(PDCA)

採用マーケティングは、一度設計して終わりではありません。

計測した数字から「どの段階の・どの施策が効いていないか」を特定し、メッセージやチャネル、コンテンツを修正していきます。候補者の動きは年々変わるため、昨年効いた施策が今年も効くとは限りません。

改善のサイクルは、採用シーズンが終わってからの振り返りだけでなく、週次・月次の定例レポートに組み込むことが理想です。小さく試して、数字を見て、直す。この繰り返しが、採用マーケティングを「仕組み」として定着させます。

レジェンダ担当者のコメント

支援の実感として、企業がつまずきやすいのは最初のSTEP1と、最後のSTEP5・6です。STEP1のターゲティングは、「誰を採りたいのか」がぼんやりしたまま発信を始めてしまうケースが多く見受けられます。

一方で、意外と見落とされがちなのが、計測と改善の部分です。たとえば母集団形成に使っている媒体のクリック数やエントリー数を、採用担当者ご自身が把握していないことは珍しくありません。チャネルごとの情報が人事・採用担当者に分散していて、誰もファネルとしてつなげて見ていないのです。

イベントの効果測定も同様です。説明会やセミナーでアンケートを取っている企業は多いのですが、「設問を設定して、回収して、以上」というプロジェクトをよく見かけます。本来は回答内容を分析して、「セミナーへの反応がこうだから内容を変えましょう」「候補者がこの情報を求めているから次はこれを伝えましょう」と改善に使うためのものです。実際、アンケート分析の結果からセミナー内容を変更したことで候補者の反応が変わった支援例もあります。裏を返せば、STEP5・6は仕組みさえつくれば確実に差がつく領域です。設問の置き方、集計の仕方、そこからの解析方法。このあたりをメソッドとして整えるだけで、「やりっぱなしの採用活動」から抜け出すきっかけになります。

採用マーケティングでよくある失敗・注意点

採用マーケティングは、正しく設計すれば採用活動全体の精度を上げられる一方、進め方を誤ると「手間が増えただけで成果が変わらない」という状態に陥ります。

現場でよく見られるつまずきは、次の4つに集約されます。

  • ペルソナが曖昧で施策がバラバラになる
  • KPIを応募数だけで測ってしまう
  • ツール・チャネルが目的化してしまう
  • 人事だけで取り組んで現場を巻き込めない

順に見ていきます。

ペルソナが曖昧で施策がバラバラになる

最も多い失敗が、ターゲットの解像度が低いまま施策を走らせてしまうパターンです。

「若手で優秀な人」「成長意欲のある人」といった曖昧な定義では、採用サイトのメッセージ、スカウト文面、イベントの内容がそれぞれ別の人に向いてしまい、施策全体としての一貫性が失われます。発信量は増えているのに、誰の心にも刺さらない——という状態です。

施策がばらついていると感じたら、個々の施策を直す前に、ペルソナに立ち返ることが先です。「この施策は、誰のどの段階の行動を変えるためのものか」を一つずつ問い直すと、やめるべき施策と磨くべき施策が見えてきます。

KPIを応募数だけで測ってしまう

応募数・プレエントリー数は分かりやすい指標ですが、これだけを追うと判断を誤ります。

数が増えても、ターゲット外の応募ばかりであれば選考の工数が増えるだけです。むしろ母集団が大きくなった分、その後の移行率の低さが採用コストとして跳ね返ってきます。

見るべきは「数」と「率」の両方です。応募の先にあるイベント参加率、選考移行率、内定承諾率まで含めて初めて、施策が採用成果につながっているかを判断できます。「応募は増えたのに採用できない」という相談の多くは、この指標設計の段階に原因があります。

ツール・チャネルが目的化してしまう

「採用にSNSを使いたい」「スカウトサービスを導入したい」という手段先行の取り組みも、失敗につながりやすいパターンです。

ツールやチャネルはあくまで、誰に・何を届けるかが決まったあとに選ぶものです。目的が曖昧なまま導入すると、運用の負荷だけが増え、「やってはいるが、何のためにやっているのか分からない」状態になります。効果が出ないままツールだけが入れ替わっていく企業も少なくありません。

新しい手法を検討するときは、「それはファネルのどの詰まりを解消するためか」を先に言語化する。この一手間が、手段の目的化を防ぎます。

人事だけで取り組んで現場を巻き込めない

採用マーケティングには、現場社員の協力(インタビュー・リファラル・面接での動機付け)や、広報・経営層との連携が欠かせない場面があります。人事部門だけで完結させようとすると、発信できる情報が限られ、施策の幅が狭まります。

一方で、最初から全社を巻き込もうとして、調整に時間を取られて何も進まないのも本末転倒です。

現実的なのは、人事だけで動かせる領域から小さく始めて、成果を見せながら巻き込む範囲を広げていく進め方です。「現場を巻き込めないから進められない」のではなく、「巻き込まなくても動かせる施策はどれか」から着手する発想が、停滞を防ぎます。

レジェンダ担当者のコメント

成果が出ない企業に共通しているのは、母集団の「数」を追うことが目的化しているパターンです。とりあえず広く投げかけてプレエントリーは集まっても、インターンの予約にも選考にもつながりません。候補者から見れば同じような企業が並んでいるだけなので、結局知名度のある企業に流れていきます。もう一つ、最近強く感じているのが、候補者側の変化です。学生の情報収集では、SNSやYouTubeでで「選考対策」のコンテンツをみています。企業理解のコンテンツは思ったほどみられていない印象です。エントリーシート対策、面接対策、いつから対策を始めるかなど、就職活動の対策を教える塾のような存在も学生の口からよく出てくるようになりました。自分に合う会社を探す情報収集ではなく、「どうやったら受かるか」の情報収集に寄っています。

この変化を踏まえると、企業側がイメージ発信だけを磨いても、候補者にはそもそも見られていない可能性があります。だからこそ、接点を持てた候補者に対して生の情報を確実に渡す設計——選考プロセスの中での情報提供やコンテンツ配信——の重要性が増していると感じます。

採用マーケティングを推進するためのRPO活用

ここまで見てきたように、採用マーケティングは一度きりの施策ではなく、設計・実行・計測・改善を回し続ける「仕組み」です。そして多くの企業がつまずくのは、考え方の理解ではなく、この仕組みを回し続けるリソースと運用体制の部分です。

そこで選択肢になるのが、採用代行(RPO)との組み合わせです。このセクションでは、次の観点から整理します。

  • なぜ採用マーケティングとRPOは相性が良いのか
  • 当社が採用マーケティング支援として提供している内容
  • どんな企業・フェーズでRPO活用が特に効果的か

採用マーケティングとRPOの相性の良さ

採用マーケティングとRPOの相性が良い理由は、大きく3つあります。

1つ目は、運用の継続性です。チャネルごとのデータ集計、コンテンツの定期配信、候補者対応。採用マーケティングの実務は地道な運用の積み重ねであり、他業務と兼務する採用担当者だけで回し続けるのは容易ではありません。運用部分をRPOが担うことで、施策が「立ち上げたが続かない」状態に陥ることを防げます。

2つ目は、他社事例にもとづく相場観です。自社の採用データだけを見ていても、移行率の数字が良いのか悪いのかは判断がつきません。多数の企業を支援しているRPOは、業種・規模・採用種別ごとの傾向を踏まえて「どこが詰まっているか」「どの打ち手が合うか」を比較の中で判断できます。

3つ目は、社内の役割分担が明確になることです。定型的な運用・計測を外部に任せることで、社内の採用担当者は、ペルソナや EVP の意思決定、現場・経営層との調整といった、社内の人間にしかできない仕事に時間を使えるようになります。

弊社が採用マーケティング支援として提供している内容

当社では、採用代行(RPO)の支援の中で、採用マーケティングの考え方を組み込んだ運用を提供しています。主な支援領域は次の通りです。

  • ターゲティング・打ち出しの設計:「誰を採りたいのか」「誰に何を届けるのか」の整理から、媒体・チャネルの選定までを支援します
  • 候補者への情報発信設計:候補者の心情変化に合わせて、どの時期に・どんなコンテンツを届けるかの配信計画を設計し、コンテンツの企画・運用まで伴走します
  • ファネルの計測と改善提案:媒体・チャネルごとのデータやイベントアンケートを集約・分析し、どこが弱く、どこの反応が高いかを可視化。配信して終わりにせず、次の打ち手につなげます
  • 採用オペレーションの運用代行:候補者対応・日程調整・選考管理など、仕組みを回し続けるための実務を担います

ポイントは、戦略提案だけでも、作業代行だけでもなく、設計から運用・改善までを一体で回すことです。採用マーケティングが機能しない最大の原因は「続かないこと」であり、続く体制ごと提供することが当社の支援の核になっています。

どんな企業・フェーズでRPO活用が特に効果的か

採用マーケティング文脈でのRPO活用が特に効果を発揮しやすいのは、次のような企業・状況です。

  • 採用担当者が少人数・兼務で、運用に手が回らない企業:仕組みの設計はできても回し続けられない、という壁を越えられます
  • 母集団は集まるが、その先につながらない企業:移行率の計測と改善は、まさにRPOの知見が活きる領域です
  • 採用ホームページなどに大きな投資をしにくい中堅・中小企業:大規模なサイト改修ではなく、候補者接点の中でのコンテンツ配信など、小さく始めて効果を確かめられる打ち手から着手できます
  • 採用マーケティングを始めたいが、何から手をつけるべきか分からない企業:現状のファネルの診断から入ることで、優先順位を明確にできます

逆に、すべてを丸投げする形では効果は出にくくなります。ペルソナや EVP の最終判断、現場の巻き込みは社内にしかできない仕事です。「どこを自社で担い、どこを任せるか」の線引きを最初にすり合わせることが、RPO活用を成功させる前提になります。

レジェンダ担当者のコメント

「採用マーケティングを導入しましょう」という看板を掲げて支援が始まるケースは、まだ多くありません。ただ、振り返ってみると、私たちが現場でやってきたことの中身は、まさに採用マーケティングそのものです。

たとえば、お客様から媒体や母集団のデータを連携いただいて分析し、どのチャネルが効果的かの示唆をお出しする。イベントアンケートの回答内容を分析し、その結果をもとにセミナーの内容自体を変更する。候補者の心情変化に合わせたコンテンツの配信設計を行い、配信後の反応からどこが弱いかを特定して改善する。いずれも、ファネルを計測し、打ち手を変えるという採用マーケティングの実践です。

一方で、伸びしろも感じています。多くの採用プロジェクトでは、アンケートは「改善のヒントが少しでも得られれば」という位置づけで終わりがちで、マーケティング視点での効果測定がウィークリーレポートに組み込まれているケースはまだ少ないです。設問の置き方、集計の仕方、解析の方法をメソッドとして整え、毎回の定例で改善提案までつなげる。ここを徹底できるかどうかが、これからの採用マーケティングの価値の分かれ目だと考えています。

また、メールのテンプレートを少し候補者向けに書き換える、といった小手先の工夫はもう効きません。候補者は自分に必要な情報しか見ていないからです。それよりも、どの時期に・誰に・何を届けるかという情報の設計そのものから関わらせていただく方が、確実に成果につながると実感しています。

まとめ:採用マーケティングは「選ばれる仕組み」づくりから

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を採用に転用し、候補者に「選ばれる」までのプロセスを設計する取り組みです。本記事のポイントを整理します。

  • 採用マーケティングの本質は、ツールの導入ではなく「誰に・何を・どう届けるか」の設計にある
  • 売り手市場の定着と候補者の行動変化により、「待ちの採用」だけでは必要な人材に届かなくなっている
  • 核心は採用ファネルの設計。「数」ではなく段階ごとの「移行率」を見ることで、打つべき手が変わる
  • 手法に万能はなく、ターゲットに合わせた媒体の見極めと組み合わせが成果を分ける
  • つまずきやすいのは、ペルソナ設計と、計測・改善の仕組み化。やりっぱなしにしない体制が成否を決める

何の数字を見て、どこを直すのか。その判断軸を持って回し続けることが、「選ばれる企業」への一番の近道です。一方で、「自社のファネルはどこが詰まっているのか」「何から着手すべきか」と、判断に迷う場面もあるかと思います。

採用マーケティングの推進にあたっては、その担い手となる採用代行(RPO)の特徴を押さえておくと、自社で担う範囲と任せる範囲の線引きがしやすくなります。RPOのメリットと注意点、選定のポイントは、採用代行(RPO)のメリットとデメリット!選定のポイントや事例も解説の記事で解説しています。

採用代行(RPO)そのものの業務範囲や人材紹介との違いから整理したい方は、採用代行とは?業務内容・人材紹介の違いから利用のポイント7選を解説の記事をご覧ください。

当社では、採用ファネルの現状整理から運用・改善まで、800社以上の支援実績をもとにお手伝いしています。採用マーケティングの推進や採用活動の見直しをお考えの方は、お気軽にお問い合わせからご相談ください。

この記事の監修者

中津川
セールス&マーケティング部 統括リーダー

■経歴
レジェンダ・コーポレーションに入社後、外資IT大手・メーカー等の新卒・中途の採用アウトソーシング、コンサルティングを担当。その後、広報、セールスを経て、現在はマーケティングに従事。インナーブランディング・Webマーケティング企画実行を担当している。

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