
採用活動の現場では近年、「効率化」という言葉を耳にする機会が増えています。
採用人数の増加、選考スピードの早期化、担当者の業務負荷増大などを背景に、限られたリソースの中で成果を求められる状況が続いているためです。
一方で、効率化を急ぐあまり、選考の質が下がったり、ミスマッチが増えたりするケースも少なくありません。
「業務は軽くなったが、採用はうまくいかなくなった」という声が聞かれることもあります。
本記事では、当社が現場で観測してきた一次情報をもとに、採用効率化を“削減”ではなく“再配分”として捉える考え方と、成果を落とさずに効率化を進めるための実務ポイントを整理します。
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採用の現場では「効率化」という言葉が当たり前のように使われていますが、その捉え方は決して一様ではありません。
業務負荷を下げることを指す場合もあれば、選考スピードを上げることだけを意味しているケースもあります。
一方で、効率化を進めた結果、かえってミスマッチが増えたと感じている現場も少なくありません。
こうしたズレの背景を見ていくと、採用効率化そのものの定義が曖昧なまま使われている状況が浮かび上がります。
採用効率化を語る際、特に論点になりやすいのは次の点です。
まずは、この前提のズレから押さえていきます。
採用効率化という言葉から、「業務を減らす」「人手を減らす」といったイメージを持つ方は多いかもしれません。
実際、現場でもそうした文脈で語られる場面はよく見られます。
ただ、採用の状況を丁寧に見ていくと、少し違った景色が見えてきます。
当社がご支援した企業では、採用担当者の時間が、判断や見極め以外の作業に多く割かれているケースが少なくありませんでした。
日程調整や応募者対応、選考状況の管理、関係者への共有。
一つひとつは欠かせない業務ですが、こうした作業が重なることで、候補者を見る時間が後回しになってしまうことがあります。
現場でよく聞かれるのは、効率化とは「作業をなくすこと」ではなく、「判断に使える時間を確保すること」だという感覚です。
限られた時間の中で、誰をどう決めるのか。その余白をどう作るかが、採用効率化の出発点になっています。
採用効率化が話題に上がるようになった背景には、採用環境そのものの変化があります。
担当者の工数が増えた、という話だけでは片づけられません。
中途・新卒を問わず、候補者が複数社を同時に見ている状況は、いまや特別なことではなくなりました。
そのため、選考に時間がかかるほど、途中で離脱されやすくなっています。
一方で、スピードを意識するほど、判断が雑になっていないかを気にする現場も少なくありません。
「早く進めたいが、きちんと見極められているのか自信が持てない」という声も聞かれます。
さらに、採用人数が増えるほど、調整や連絡、情報共有といった業務は一気に増えていきます。
一定規模以上の採用では、こうした負荷が自然と積み重なり、従来のやり方では回らなくなる場面も出てきます。
こうした状況が重なり、効率化を意識せざるを得なくなっている。
それが、いま採用効率化が注目されている背景です。
採用効率化を考える際には、個別の施策だけでなく、採用活動全体をどのように設計しているかという視点も欠かせません。
採用設計については、「採用設計の基本と実践|成功する人材獲得の鍵」でも触れています。
採用が思うように進まないとき、その原因を候補者や市況に求めてしまうことは少なくありません。
ただ、現場で起きている課題を丁寧に見ていくと、採用業務そのものの構造が非効率を生んでいるケースも多く見られます。
知らず知らずのうちに特定の業務へ工数が集中し、改善の余地に気付けていないこともあります。
現場で特に見られやすいのは、次のようなポイントです。
どこに負荷が集中しているのかに目を向けると、見えてくるものがあります。
一次情報を振り返ると、採用現場で特に工数が集中しやすい業務には共通点があります。
これらは採用活動を進めるうえで欠かせない業務ですが、一つひとつは判断を伴わない定型作業であることが多く、積み重なることで大きな負荷になりやすい領域です。
実際、採用担当者からは
「一日が調整と対応で終わってしまい、候補者の検討に時間を割けない」
といった声も聞かれます。
レジェンダ担当者のコメント
採用活動の効率化を進める中で、AI面接や録画面接は、運用負荷を下げる一つの選択肢として活用されています。
特に録画面接は、日程調整や面接官アサインの工数を削減できる一方で、大量の録画を確認する作業が新たな負荷になりやすいという課題もあります。
その課題に対し、契約社員採用をご支援していた企業では、過去の合格者データをもとにAIで判定を補助することで、確認工数やコストの削減につながったケースがありました。
ただし、十分なデータがなければ判断精度は安定せず、人材像の変化にも対応しにくい。
そのため、AIの判定結果は参考情報として扱い、最終的な合否や判断が分かれる部分は人が確認する運用が取られています。
重要なのは、どこまでを自動化し、どこを人が担うのかを先に定めたうえで、ツールを選ぶことだと考えています。
もう一つ、非効率を生みやすい要因として挙げられるのが属人化です。
評価基準が面接官ごとに異なっていたり、採用判断が特定の担当者に集中していたりすると、確認やすり合わせに時間がかかりやすくなります。
たとえば、同じ候補者について
「どこを評価すればよいのか」
「今回は誰の判断を優先すべきか」
といった点を、選考のたびに確認する必要が生じるケースもあります。
その結果、関係者間のやり取りが増え、判断そのものよりも調整に時間を取られてしまうことがあります。
属人化自体が悪いわけではありません。
ただ、「どの前提で、何を見るのか」が共有されていない状態では、採用全体のスピードが落ちやすく、同じ判断を安定して繰り返すことも難しくなります。
属人化を防ぐためには、評価の前提や判断軸を整理し、共通認識として持つことが重要になります。
参考コラム:採用基準の決め方とは?ミスマッチを防ぐ設計ステップ
採用効率化という言葉から、AIやATSなどのツール導入を思い浮かべる方も多いかもしれません。
実際、現場からも「ツールを入れれば楽になるのでは」という声が聞かれることがあります。
一方で、「導入したものの、思ったほど楽にならなかった」というケースも少なくありません。
その背景を見ると、採用プロセス自体が整理されないまま、手段だけが先行してしまっている状況が浮かび上がります。
採用効率化を進める際には、次のような観点を行き来しながら考えられることが多いようです。
手段を決める前に、全体の流れを一度俯瞰してみることが欠かせません。
効率化に取り組む際、最初にツール導入を検討するケースもあります。
ただ、現場ではプロセス整理が後回しになり、結果として効果を実感しにくい例も見られます。
採用の流れを振り返ってみると、
といった点が、意外と共有されていないことがあります。
こうした流れを一度書き出してみるだけでも、
「人が担わなくてもよい作業」と「人が判断すべき場面」が分かれてきます。
その整理ができてからのほうが、効率化の打ち手も考えやすくなります。
こうした定型業務は、仕組みやツールの使い方次第で、担当者の負荷を大きく変えられる領域でもあります。
関連記事:採用管理システム(ATS)おすすめ一覧21選|新卒・中途採用の用途別の比較や選び方も解説
採用の現場では、AIやツールを取り入れたことで、業務の進め方が少し楽になったという話も見られます。
ただし、効果を感じられているのは、判断そのものではなく、その前段階での使い方です。
たとえば書類選考では、生成AIを使って職務経歴書やエントリーシートの要点を整理し、評価観点に沿って見比べやすい形に整えるといった工夫が行われています。
候補者を判断する工程は人が担い、その前の読み込みや整理を軽くすることで、全体の負担が下がったという声もあります。
日程調整やスカウト文の下書きなど、定型性の高い業務でも、AIやRPAが検討される場面は増えています。
いずれも、業務をすべて自動化するというより、「判断に入る前まで」を支える使い方です。
ツールをどう使うかは、採用プロセスや体制によっても変わります。
人が判断すべきところを残しながら、前後の作業を軽くする。
その前提を意識した活用が、現場では選ばれているようです。
こうした考え方は、採用領域で進むDXの流れとも重なります。
参考コラム:採用DXとは?トレンドの採用ツールと事例
さらに、採用のオペレーションを安定して回し、成果につなげ続けていくためには、
ツール単体ではなく、設計・実行・改善を一体で捉える視点も欠かせません。
レジェンダ担当者のコメント
最近では、アバター型のAI面接を導入する企業も増えてきています。24時間いつでも面接を実施できるため、候補者との日程調整や面接官の確保といった前工程の負担を大きく減らせる点が、採用効率化の観点で評価されています。
また、質問対応だけでなく、社長の考え方や会社の理念、事業の方向性などを事前にインプットしたアバターが面接を行うことで、一次接触の段階から企業理解を深める場として設計されているケースもありました。
単なる一次選考の代替ではなく、候補者対応と初期の動機形成をまとめて担うことで、担当者が本来向き合うべき見極めや対話に時間を使える状態を作れている。そうした設計の結果、効率化と採用活動の質向上を両立できている事例も見られます。
採用効率化の手段として、外部リソースを活用する選択肢もあります。
近年は、採用業務のすべてを任せるというより、実務負荷の高い領域だけを切り出す形で検討されることが増えています。
たとえば、応募者対応や日程調整、選考状況の管理など、判断を伴わない業務を外に委ねることで、社内では見極めや意思決定といった役割に時間を使いやすくなった、というケースも見られます。
業務のやりとりが整理されることで、結果として採用のスピードと質が両立しやすくなる場面もあります。
一方で、すべてを外部に任せればよい、という話ではありません。
どの業務を自社で担い、どこを外部に委ねるのか。
その線引きをあらかじめ考えたうえで活用されているケースが多いようです。
参考コラム:採用代行(RPO)のメリットとデメリット
レジェンダ担当者のコメント
上層部から採用活動の効率化を期待され、その対応策としてアウトソーシングを導入した企業でも、思ったように効率化が進まなかったケースがあります。
こうした事例を振り返ると、運用を外に出した先で「現場にどんな役割を担ってほしいのか」「どこに時間を使ってほしいのか」といった期待値が十分に整理・共有されていなかったことが、要因の一つでした。
コア業務・ノンコア業務の捉え方が上層部と担当者の間でずれていると、アウトソーシングをうまく活用できず、結果として細かな調整ややり取りに時間が取られ、採用効率を実感しにくくなります。
アウトソーシングによって手が空くことは、仕事がなくなるという意味ではありません。
その時間を使って、何を深めたいのか、今の採用活動に何が足りていないのかを見直し、補っていく余地が生まれると捉えるほうが実態に近いと言えます。
だからこそ、外部に業務を委ねる前に、効率化の先でどんな状態を目指したいのかを明確にしておくことが、アウトソーシングを活かす前提になります。
採用効率化は、うまくはまれば現場の負担を軽減しながら、成果の向上にもつながります。
ただし、進め方を誤ると、かえって採用の質を下げてしまうリスクもあります。
現場でよく聞かれるのは、
「楽にするはずだったのに、思ったほど効果を感じられなかった」
「スピードを意識するあまり、後から違和感が残った」
といった声です。
背景を見ていくと、いくつか共通するつまずき方があります。
採用効率化を進める際には、こうしたポイントをあらかじめ意識しておく必要があります。
効率化を進める中で起こりやすいのが、スピードだけが評価軸になってしまうケースです。
「早く終わらせること」が意識されるほど、判断のプロセスが後回しになってしまうことがあります。
実際の現場では、
といった話も聞かれます。
選考を早めること自体が問題なのではありません。
ただ、スピードを上げる理由や、その結果が採用成果につながっているかを振り返らないまま進めてしまうと、違和感が残りやすくなります。
もう一つ、失敗につながりやすいのが、自動化を進めすぎてしまうケースです。
特に、業務の前提が十分に整理されないまま仕組み化を進めると、別の負荷が生まれることがあります。
たとえば、表記の揺れやファイルの保存場所、担当者ごとの運用ルールなど、
これまで人が暗黙的に判断していた部分が想定から漏れると、
「例外対応」という形で手作業が増えてしまうことがあります。
その結果、
といった状況に陥ることも少なくありません。
すべてを自動化しようとするよりも、
判断に入る前までを整える。
その範囲に留めて設計するほうが、現場では扱いやすいケースが多いようです。
ここまで見てきたように、採用効率化は単なる業務削減の話ではありません。
時間や判断の使い方を見直し、採用活動全体をどう設計し直すかが問われています。
効率化という言葉に引っ張られすぎると、本来大切にすべき判断や見極めの領域まで手放してしまうこともあります。
その結果、「楽になったはずなのに、どこか違和感が残る」という状態に陥るケースも少なくありません。
採用効率化を考えるうえで、意識しておきたいのは次のような視点です。
何を減らすかではなく、何に時間を使うのか。
その判断軸を持って取り組むことで、成果を落とさずに業務負荷を軽減しやすくなります。
一方で、頭では整理できていても、「自社の場合はどこから見直すべきか」「今のやり方が本当に合っているのか」と判断に迷う場面もあるかもしれません。
採用効率化やプロセス設計について、現状を整理しながら考えたい場合は、お気軽にお問い合せからご相談ください。
この記事の監修者
金濵 祐香子
採用支援事業部
■経歴
通信・IT・メーカー・製造・小売など、さまざまな業界のクライアントを担当し、新卒・中途採用の支援をPMとして推進。常駐・遠隔の両形態で支援を行い、リクルーター・面接官・バックオフィス統括等の役割を担いながら、選考設計から運用まで一貫して支援している。

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