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労務コラムなぜ、人事労務業務をアウトソースしてもコスト削減が進まないのか?

アウトソーシングを検討し始めたきっかけは何でしょうか?

セールス担当のMiyaです。私は仕事柄、給与計算や社会保険手続など、人事周りの業務のアウトソーシング(業務委託)をご検討中の企業の方とお話する機会が多くあります。お話をおうかがいする部署としては人事総務などの間接部門が多いのですが、初めてお会いする場面で、まずお伺いするのが、「なぜ、アウトソーシングという手段を検討しているのか」という背景の部分です。

よく聞かれる人事の声をまとめるとこんな感じです。

  • 「人事担当者が忙しすぎる。体制強化もできず、社内での内製対応に限界。働き方改革も叫ばれているし、自社の社員の業務負荷を減らしたい。」
  • 「1名体制かつ多品種少量生産の人事業務ばかりで、属人化している。いざという時のリスクが大きいので事業継続計画(BCP)の一環として考え、安定的に運用する体制にしたい。」
  • 「これまで給与計算をやってきた担当者が退職してしまう。人材不足の波で新規採用するにも求めるスキルのある人になかなか会えないし、時間がかかる。」
  • 「全社の生産性向上や働き甲斐の向上など、経営から降りてくる人事課題に向き合わなければならない。会社が生き残り成長を続けるためには、人事もルーチン業務をやっている場合ではなくなった。」
  • 「間接部門はさらにヘッドカウントを減らせ、人件費をはじめとするコストを減らせ、の号令がかかってしまった。アウトソースすればコストは下がるはず。」

うんうん、うちも同じだ……とうなずきたくなるようなお話ばかりかもしれませんね。これから人口が減少し労働力確保の難易度がより高くなる将来像が見えているだけに、限られたリソースをどう有効活用し企業活動を維持成長させていくのか、どの企業も策を考え始めていらっしゃるということが良くわかります。

アウトソーシングのメリット

アウトソーシングを検討されている人事のお悩みに対して、アウトソーシングを導入した際のメリットをまとめますと下記のようになります。

人事のお悩みとアウトソーシングのメリット

No. 人事のお悩み アウトソーシングのメリット
1 「人事担当者が忙しすぎる。体制強化もできず、社内での内製対応に限界。働き方改革も叫ばれているし、自社の社員の業務負荷を減らしたい。」 業務負荷分散。(シンプルに、自社の抱える業務量が減ります。)
2 「1名体制かつ多品種少量生産の人事業務ばかりで、属人化している。いざという時のリスクが大きいので事業継続計画(BCP)の一環として考え、安定的に運用する体制にしたい。」 業務可視化・効率化。(外部に業務を持ち出すというプロセスを経ることにより、誰かの頭の中にしか入っていなかった業務が可視化され、ムダな工程にはメスが入り、結果として業務の効率化が進みます。)
3 「これまで給与計算をやってきた担当者が退職してしまう。人材不足の波で新規採用するにも求めるスキルのある人になかなか会えないし、時間がかかる。」 人事部員の退職・異動などのスイッチングコストの低減。代替要員が確保できず業務が止まるリスクの低減。
4 「全社の生産性向上や働き甲斐の向上など、経営から降りてくる人事課題に向き合わなければならない。会社が生き残り成長を続けるためには、人事もルーチン業務をやっている場合ではなくなった。」 人事部員の戦略人事(コア業務)へのシフト。(人事リソースを、より高付加価値な業務に振り向けることができるようになります。)
5 「間接部門はさらにヘッドカウントを減らせ、人件費をはじめとするコストを減らせ、の号令がかかってしまった。アウトソースすればコストは下がるはず。」 間接部門コストの変動費化。(内製であれば人に対してコストが発生しますが、業務に対してコストが発生する、という考え方ができます。)

アウトソーシングが軌道に乗り始めて、5つの課題が一気に解決!一件落着!となればよいのですが、こうした理想の姿に落ち着いたとしても、なかなか解決できない問題が、「コストを削減する」ということです。

「アウトソーシングをすればコストが下がる」というのは、多くのケースの場合にあてはまらないというのが実情です。経営サイドから「アウトソーシングによるコスト削減」を期待されることも多いかと思いますが、なぜアウトソースしてもコストは減らないのでしょうか。

なんとなくアウトソーシングしても、コストが減らない理由

お客様との商談が進むなかで、珍しくないのが、「現状の社内でかかっている人件費と、アウトソーシング費用を比較して、アウトソーシング費用のほうが高いために社内の決裁が通らず、アウトソーシング自体を断念せざるを得なくなった」というお話です。アウトソーシングによる現状打破を期待されていた人事ご担当者様の無念さをうかがうにつれ、コストを単純比較するだけでなく、メリットを数値化することの重要性とその難しさを感じるばかりです。

お考えいただきたいことは、今の職場のなかで、理想形を実現した際のコストです。今のままのルール手順で、誰かが休んでも仕事が止まらないバックアップ体制があって・・・という状況を実現するために、本来ならば何人の体制があればよいでしょうか。現状よりも人数が増えることが容易に想像できると思います。つまり、単純に業務を担当する人だけを置き換えようとすると、人数を増やさなければなりません。コストを抑えるためには人件費の安い地方や海外に出ていくことを考えるくらいしか策はない、ということになります。

そこで、地方や海外への移転よりはアウトソーシング導入が身近に感じてくるかもしれません。しかし、人材不足はアウトソーシング会社にも漏れなく襲い掛かってくる避けられない現実ですので、人件費が安いということも未来永劫保障されているとは言い難いものです。また、アウトソース先を管理するための追加コストや、サービス品質のことを考えると、アウトソースすることでトータルコストを下げることは、もはや過去の良き時代の話のようにも思えてしまいます。

この状況を打開するためには、(結果的にアウトソーシングするにせよ、しないにせよ、)現状の仕事のやり方そのものを変えることです。つまり、業務プロセスのムリ・ムダ・ムラをなくし業務ボリューム自体をミニマイズすることなのです。

アウトソーシングで成果を出すために、乗り越えなければならない壁と乗り越え方

アウトソーシングの導入を進める際に、お客様自身が業務のどこにムリ・ムダ・ムラがありそうか見当はついている場合は「このまま実行していきましょう!」となります。しかし、多くの場合はそう簡単には進みません。なぜかというと、そもそも業務の現状がどうなっているのかについて、社内で共通理解ができているケースのほうが少ないからです。

周囲と共有していない担当の●●さんが悪い、と言いたいわけではありません。これだけビジネスが変化するスピードが速いと、そのスピードに制度・ルールが追い付かなくなります。それがゆえに個別の対応が走り、さらには個別対応が属人化しやすい、という人事業務の特性があるので、ある意味仕方がない状況なのです。

例えば、海外拠点新設という経営判断があった場合、現行制度で対応できない手当の考え方や渡航準備等の海外就労ルール整備よりも、海外赴任する個人への個別対応が先行し、人事制度全体の整合性をふまえた制度設計は後から行うということが生じます。

こうして人事業務が煩雑化・属人化した環境下では、業務のすべてを可視化し続けることは難しく、そこにパワーをかけてもあまり意味がない、ともいえます。この場合は可視化よりも、制度やルールの断捨離を進め、シンプルに何が必要かを考えて「やる」「やらない」を判断することが大切です。そして、その判断基準を研ぎ澄ましながら、「この先の時代の人事業務はどうあるべきか?」を念頭に組み立てることを優先すべきです。

このような、時には痛みをも伴う改革をするにあたって、改革フェーズから一緒に伴走できるアウトソーシング会社をパートナーに選ぶことが理想的です。なぜなら、アウトソーシング会社が持っている他社事例や法令対応等のナレッジや、業務の合理化や可視化を実現するシステムなど、単なるリソース提供者以上の価値を享受できることが期待できるからです。

壁を乗り越え、業務がスリム化するとどんなことができるか?

アウトソーシングが始まる前に業務をスリム化しておくと、コストが雪だるま式に膨れ上がるということはないでしょう。

アウトソースして人事は手が空くので、社員の生産性を上げる取り組みを考えられるようになります。これまでの「できない理由」がなくなり、ようやく人事が取り組むべき課題のスタートラインに立てるということですね。

個人任せでは進みづらい社員の生産性アップを、組織としてどれだけ前進させられるのか。

社員の声をひろい、現場での課題を人事部起点で解決していけるのか。

こうした人事施策でどれだけ会社全体のバリューアップができるのか。

そちらのほうが、現状の人事コストをいくら削減できるかよりも、本来はよっぽど大事なことではないでしょうか。アウトソーシングを導入するメリットは、コスト削減ではなく、業務のスリム化をはかること。そして、空いた工数によって、人事部門がバリューアップ部門に転換することなのです。

レジェンダ・コーポレーションは、「時間に追われる人事から社員と向き合う人事」が増え、世の中がより明るくなることに貢献できればと考えています。少しでも共感いただける部分がありましたら、幸いです。

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