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全国の人事パーソンへのメッセージ

人事部長の想い切りトーク

Vol009想い切りトーク

「NEXT LEVEL」に行こう!

取材日: 2015年11月19日

  • 株式会社サイバーエージェント
  • 人事本部長
  • 武田丈宏氏

※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。

メディア事業の「Ameba」、インターネット広告事業、ゲーム事業の3本柱で急速に躍進を続けるサイバーエージェント。事業のみならず、ユニークな社内制度でも注目を集めている。人事本部長 武田丈宏 氏が人材育成戦略や、社内制度の徹底した運用についての秘訣を語る。

PROFILE粘り強い運用が、制度を風土に醸成させる

「先輩と僕の2人だけでしたから、電話にも転送機能なんてなくて、子機を「はいっ」って渡していました(笑)。」

入社当時の名古屋営業所立ち上げを、笑いながら振り返る武田氏。サイバーエージェントへ転職したのは、2003年。すでに東証マザーズには上場していたものの、社員はまだ200名程の規模だった。

大学を卒業した1999年は、証券会社の経営破綻などで象徴されるように、それまで安定していると考えられていた金融機関にも再編の大きな波が訪れていた。そんな動きをおもしろいと感じた武田氏は、幅広くさまざまな業界を見てみたいと、銀行を最初の就職先に選んだ。

4年余り法人営業を経験し、そろそろ自身の成長のために、小さな仕事でも自分で決断していきたいと考えていた。そんな時、親しい大学の先輩から誘われ、サイバーエージェントの名古屋営業所の2人目のメンバーとして転職を決めた。

「自分では、そんなに大きな変化だとは思っていなかったんです。銀行もサイバーエージェントも課題解決型の営業なので、会社が変わっても営業スタイルも特に変えずに、すんなり新しい仕事になじめました。」

名古屋には単身赴任で3年。その後、大阪アカウント局の営業局長として大阪へ。2008年に西日本事業部統括に就任し、西日本を中心に企業規模の拡大に貢献した。銀行時代から通算すると、15年間営業として活躍してきた武田氏に転機が訪れる。

2013年、人事本部副部長として東京本社に異動になる。社内教育と組織活性化施策を運用していくことが、武田氏が人事で初めて行うミッションとなった。

当時の人事本部長の曽山氏の元、武田氏も社内の活性化を図る事を目的に、新しい人事制度を制定し、運用を推進した。

「これは曽山が人事本部長時代にしたことですが、新しい人事制度を制定するときのゴールのおき方を「新規事業を何個作りだす」ではなくて、「新規事業を考える風土を作る」ということで、経営陣と最初に“握った”んですよね。

最初に、経営と人事との間でゴールに対しての“握り”があるから、人事部も運用フェーズでブレずに進めることができる…これは、とても大事です。」

サイバーエージェントの人事制度がうまくいっている要因の一つは、画期的な制度の開発と共に、粘り強い運用があると武田氏は話す。ウイークリーベースで確認し、現場の声も吸い上げていく。声の本質を見抜いて、これが経営課題だと、経営陣に上げる。地道な運用があって、制度から風土へと醸成されていく。

2015年に人事本部長に就任した武田氏。これまで、組織を縦に繋ぐ「コミュニケーション・エンジン」であった人事部だが、これからの10年は「パフォーマンス・ドライバー」として、成功事例を言語化・パッケージ化し、横展開するなど、人事の新しい役割を担っていく。

MISSION 人の成長は『決断経験値』で決まる

サイバーエージェントでの人材育成は「見つけて、任せること」と武田氏。

『新卒社長』がその象徴でもある。サイバーエージェントでは、“決断経験値”をあげることが、社員を成長させると考える。『新卒社長』とは、新卒入社して、子会社の社長に就任した社員を指す。現在その累積は40人、入社5年以内の社員が7割を占める。まさに日々、実践で決断経験値をあげている。

基本的には、社長達に“任せる”が、放り投げるわけではない。彼らには、CA8と呼ばれる役員8人のうちの1人がメンターとなり、必要であれば相談にものる。さらに70社程ある子会社は業績ごとにランキング化されており、その社長は、月1回、トップから約20社ずつにわかれて、一堂に集まり、情報交換をする場もある。会社としてのサポート、ガバナンス体制はしっかりと作り、その上で“任せる”というところに、サイバーエージェントの人事制度の完成度が伺える。

とはいえ、チャレンジには失敗がつきもの、全ての子会社が順風満風とはいかない。CAJJ制度といって子会社や事業を利益額で10段階にランキング化し、事業の昇格を目指す仕組みがある。1年半以内に黒字化できなかったら撤退、2四半期連続で減収減益になったら撤退など基本方針が定められており、この基準に抵触した場合は責任者の交代や、撤退という選択肢を役員によって検討される。

サイバーエージェントの価値観をまとめたものの中にこんな言葉がある。

「挑戦した結果の敗者には、セカンドチャンスを」

失敗したケースもデータベース化され、経営陣がきちんと把握したうえで、次のチャンスに挑戦できる機会が与えられる。実際に、2回目の挑戦で成功している女性社長のケースもある。「挑戦」と「安心」をセットにすることが、人事制度の運営で大切なことだと武田氏は語る。

“見つける”については、社内ヘッドハンティングの部署「キャリアエージェント」を新設。役員にどの部署にどういう人材が必要かとヒアリングし、一方で、社員がどういうことをしたいか、社員と面談をする。個人と企業の成長のために、ポテンシャルのある社員を、内容もサイズも適正なジョブにマッチングさせることが目的だ。2年間で300名の異動という実績と、離職率の低下という成果を収めている。

“見つける”を新卒採用にフォーカスすると、採用学生の約7割がインターンシップ参加者だという。「実際にワークをやってもらい、できなかった時のリカバリーの仕方などを見ます。同時に、我々の素を見てもらいたいと思っていますから、インターン生だからと特別“着飾る”わけではなく、社員も普段と同じスタンスで、学生に関わります。」

ちなみに、採用基準は『素直でいいやつ』。

「採用では、とびきり優秀であることより、素直でいいやつであることを優先させています。変化が激しい業界なので、柔軟に変化対応できる素直さが大切。新しい物を作っていくにあたり、一肌脱ぐような人だとか、チャレンジすることが億劫でなくて、とりあえずやってみる、というような人を採用します。カルチャーマッチを大切にするので、入社してくる学生にも納得して仲間になってもらいたい。入社してもらうために、口説いたり、スカウトしたりというのはあまりないですね。」

MESSAGE 緩まない“スピード感”は、もはや風土!?

サイバーエージェントの風土とも言える“スピード感”。

積み残されているような課題はないという武田氏。自ら新しい企業課題を見つけ出し、すぐに手を打っていく。新しい制度も次々に生まれるが、機能しなくなった制度は『捨てる会議』で検討、廃止していく。常に、よりより良い状態を目指し、全てに対してのベストを探り、ビジョンに向けて進むスピードは緩まない。

サイバーエージェントでは、年に2回、全社のスローガンが掲げられる。10月に発表された新スローガンは『NEXT LEVEL』。人数的にも、業績的にも大企業といわれる規模になった今、提供するサービスのクリエイティブや企業としての社会的な責任、事業や社員一人ひとりの倫理感など、あらゆるレベルを向上させ、「社格」を引き上げたいという想いからこの言葉が選ばれた。今は、全社で「NEXT LEVEL」に挑んでいるという。

「今のままでいいの?『NEXT LEVEL』に行こうよ!って全員が意識しています。」

人事部もこれまでの、経営陣と現場を両方向に繋ぐ「コミュニケーション・エンジン」から、人と組織で業績を上げる「パフォーマンス・ドライバー」とレベルを上げていく。制度をパッケージ化した横展開も始まっているという。

「とはいえ、やはり現場の社員の声を聞くことは大切にしたいですね。人事のメンバーには日頃から、新しい人事制度などについて、社員に聞いて、と話しています。怖くて聞けなかったりするんですよね、自分たちの否定になることもあるし。

例えば、グループ総会での表彰式。受賞すること自体が社員にとって誇りに思えるよう企画・運営していますが、その運営のさじ加減次第で、表彰式って、“しらけ”を生むこともあると思うんです。懇親会だったり、お酒の入った席で、今回の表彰どうだった?って、必ず聞くようにしています。人事のメンバーがヒアリングしたもの全てを、テキストにまとめて翌日の役員会に持って行くんです。」

「そこに、ヒントが詰まっていますから。」

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