全国の人事パーソンへのメッセージ
Vol037想い切りトーク
掲載日: 2026年5月29日
※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。
プロパティマネジメントの枠を超え、オフィスビルの新しい価値を創造し続ける三井不動産ビルマネジメント株式会社。同社は現在、従来のハード中心の運営管理から、顧客との関係性を高めていくことに重点を置くことで事業の変革を進めている。2003年の入社以来、現場のビル管理から新規事業の立ち上げまで幅広いキャリアを歩み、現在は人事部長を務める青沼氏に、自身の軌跡とこれからの時代に求められる人材像について伺った。

私は2003年に新卒で弊社に入社しました。最初の配属は当時、自営で行っていたコントロールセンターというコールセンターと緊急対応を兼ねた部署で、関東圏内の400棟近い物件の緊急連絡先を一手に引き受けるような場所でした。夜中に急を要する連絡があれば大宮や厚木まで駆けつけることもありました。お問い合わせには返答に窮するような内容も多く、そういう方への対応を続けるなかで、精神的なタフさが身についていったと感じています。
のちに渋谷エリアを中心とした物件管理も担当するようになり、空調、電気、衛生まで、建物のハード面を現場で体得した期間でした。トラブルに対し粘り強い対応が求められる厳しい環境でしたが、それが現在の私の基礎となっています。
その後、本部の事業計画策定や進捗管理などを担う業務推進課へ異動しました。ここで最も印象深かったのが、ビルオーナー様との契約切り替えを行うための営業です。
一番最初のお客様に営業に伺った際、長年続いてきた契約形態を変えることに対しご納得いただけず、解約となってしまったのですが、どうしても結果に納得がいかず、直接総務部長のもとへ何度か足を運ぶうちに本当の理由を伺うことができました。その時は契約に至りませんでしたが、私はご縁を絶やしたくないと、その後もその方に手紙でご連絡をとっていました。すると6年後のある日、「別のビルを任せたい」とご連絡をいただいたのです。
この時の人とのつながりを大事にするという経験は、今も私の中に活きています。その後、プロパティマネジメントの部署で霞が関ビルを担当し、テナントの皆様と信頼関係を築きながらチームで課題に対処した2年間は、本当に充実した時間でした。
2014年に新規事業部署の最初のメンバーに選ばれ、3人体制でゼロからのスタートでした。最初はやることも決まっておらず、世にない新しいものを生み出すのか、既存の領域を深掘りすべきなのかといった議論を重ね、たどり着いたのが「貸し方の多様化」です。
当時はオフィスを坪単価で貸す定期借家契約の一種類だけで、時間単位で貸したり会員制で席を売ったりといった貸し方を当社が行う発想がありませんでした。そうした「従来の枠組みにとらわれない新しい貸し方」を模索する実験として、取り壊しが決まったビルの一室で貸し会議室「31Builedge」の運営を始めました。この流れが、コワーキングスペース「&WORK STYLING」の1号店立ち上げにつながっています。
こうした現場での挑戦を経て、2020年4月には人事部へ異動となりました。コロナ禍の最中で、社員と電話やチャットだけでやり取りしなければならず苦労もありましたが、現在は人事部長として採用や労務全般を統括しています。

私が入社した約20年前は、中小規模物件の壊れた設備を直したり清掃したりと、建物の維持・メンテナンスを中心に行う会社から、テナント誘致などで不動産の資産価値を高め、積極的に収益を生み出していく「プロパティマネジメント」へシフトし始める変革期でした。次第に大規模ビルも三井不動産株式会社から当社に任せてもらえるようになり、自ら事業を推進していく立場へと変化していきました。
現在では、新規事業や街全体のエリアマネジメントに加え、物流施設(ロジスティクス)の管理・運営をお預かりするなど、事業領域が大きく広がっています。「ビジネスシーンの明日を変えていく」というブランドビジョンのもと、今後は建物(プロパティ)というハードの管理・運営にとどまらず、さらに進化していくつもりです。具体的には、お客様の組織課題に向き合い、働き方などのソフト面から新たな価値を企画していく、プロジェクトマネジメント力が必要な段階にあると思います。
オフィス回帰の流れは、当社にとって非常に大きなビジネスチャンスだと捉えています。「なぜわざわざ会社に来るのか」という問いに対し、明確な答えを提示できる企業がこれからの時代を制すると確信しています。
お客様から「オフィスをリニューアルしたのに社員が出社してくれない」といった話を受けた際、今までなら一部返室やレイアウト変更の対応で終わっていました。しかし、今はどのような組織を目指したいのかというコンセプトの策定から伴走させていただく機会も増えてきています。こうした顧客の組織課題に深く踏み込む姿勢こそが、他にはない当社の強みです。
不確実な状況や不得意な分野に対しても、恐れずに一歩踏み出せる人材を求めています。そして何より重視しているのは「お客様に貢献したい」「絶対に満足していただきたい」という揺るぎないホスピタリティの精神です。キャリア採用を業種不問にしているのも、他業種で高められたホスピタリティは、それだけで十分に価値があると思っているからです。
面接では、一つのことにどう向き合ってきたかを深く質問させていただきます。例えば転職理由を伺った際、今の環境でももっとやれることがあったのではないかと感じてしまうと、当社が求めるスタンスとは違うなといった判断になります。逆に、やりきった上で次にトライしようとしていると感じられると、当社でも一緒に新しい挑戦ができると思うのです。

活躍してくれている社員に対して、会社としてどう報い続けるかが最大のテーマです。当社ではここ近年、毎年処遇改定を行っていますが、一律のベースアップという形はとっておらず、各等級別の見直しや福利厚生の充実など、毎回やり方を変えながら社員へ還元しています。この春からは副業を解禁し、時短勤務の対象を小学校卒業まで拡大するなど、各種制度の整備も進行中です。
私は、仕事と生活を別々に捉える「ワークライフバランス」よりも、両者が相乗効果を生む「ワークライフインテグレーション」という考え方を大切にしています。家庭、仕事、趣味などはすべて相関関係にあり、プライベートが充実すれば仕事にも良い影響が出ると考えています。そういう目線で、会社としての働きやすさだけでなく、社員個人の自己実現を支援していく方針です。
これまでの私たちは、不動産というハードを運営するプロパティマネージャーとして価値を発揮してきました。ただ、今後はそれに加えソフト面を重視しながら、多様な関係者を取りまとめ、価値を形にしていくプロジェクトマネージャーへと進化していく必要があります。
その中で人事として意識しているのが、社員一人ひとりのキャリア形成です。現場が複雑化する中で、専門性を磨くスペシャリストを目指すのか、幅広い経験を積むゼネラリストを目指すのか、どういった道を用意するのかは会社としても大きなテーマですし、本人が葛藤するのも当然だと思っています。ただ、どの領域にいても、「あなたに任せてよかった」と言ってもらえる信頼を築ける人であれば、変化を過度に恐れる必要はありません。特定の専門性に安住するのではなく、多様な現場で自分ならではの価値を発揮し続けられるように、会社としてその挑戦をしっかり後押ししていきたいと考えています。

人事という仕事は全社員が相手になるため、どうしても既存のルールや仕組みに縛られた話ばかりになってしまいます。しかし、会社とは、前提の全く違う人たちがたまたま集まっている場所にすぎません。だからこそ、社員という大きなくくりではなく、一人の人間として個々に向き合うことが何よりも大切だと考えています。
私がかつて営業時代に学んだように、相手が誰であっても向き合うことを諦めず、どれほど困難な課題であっても、相手の人生に深く関わり対話を続ける。この基本さえ忘れなければ、どれほど時代や仕組みが変わっても、人事としての判断がブレることはないと思っています。制度や数字の先にいる生身の人間を見つめ続け、組織をより良く変えていく。そんな人事ならではの醍醐味を噛み締めながら、共に歩んでいきましょう。人事に関わる皆様が、一人ひとりの人生に寄り添うパートナーであり続けることを心から願っています。

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