第2章:【What】
最終更新日:2026年2月27日
採用活動のボトルネックは、工程や進捗の「管理不足」ではなく、候補者心理を置き去りにしたプロセス運用にあります。候補者は選考が進むほど不安や比較検討が強まり、内定が近づくほど意思決定は難しくなる。だからこそ採用は、企業が人を選別する作業ではなく、候補者の意思決定を支援する“営業活動”として設計されるべきです。本章では、RPO(採用代行)や採用コンサルティングの現場で成果を分けるプロセスマネジメントの定義と、内定者フォローを含む介入の思想を整理します。
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前章において、従来の「静的プロジェクトマネジメント」が現代の採用に通用しなくなっている背景を述べた。では、私たちが提唱する「プロセスマネジメント」とは、具体的に何を指すのか。
最も誤解されやすい点は、それが単なる「工程管理」や「進捗管理」の厳密化を意味するのではない、ということである。 スケジュール通りに面接を消化し、合否連絡を漏れなく行う。これらは「事務処理(アドミニストレーション)」であって、マネジメントではない。事務処理をどれほど効率化しても、採用力は上がらない。
プロセスマネジメントの本質は、採用活動を「企業が人を選別するプロセス」としてではなく、「候補者の意思決定を支援するプロセス」として再定義することにある。 すなわち、採用とは「管理」ではなく、「営業活動(セールス)」という一面がある 。
営業活動において、顧客の「購買プロセス」を無視して商談を進める営業担当者は二流である。 顧客がまだ課題認識の段階にあるのに、いきなり製品スペックを説明したり、顧客が他社との比較で迷っているのに、「当社の見積もり期限は明日だ」と迫ったりすれば、失注するのは自明である 。
優れた営業とは、顧客の検討フェーズに合わせて、適切な情報を、適切なタイミングで提供し、顧客の意思決定を前に進める行為を指す 。
しかし、こと採用になると、多くの企業がこの「当たり前の営業活動」ができなくなることがある。 「選考フローは一律でこう決まっているから」「面接官の都合がつかないから」といった自社都合(売り手の都合)を優先させてプロセスを進行させる。候補者が不安を感じているタイミングで放置し、他社と比較検討したい心理を「志望度が低い」と切り捨てる。 採用担当者が「当たり前の営業活動」を忘れた、というよりは、“このタイミングで上司(または他の社内関係者)に変更の相談をするのは億劫だ”という心理的ブレーキによって硬直化しているケースがある。理由はどうであれ、これでは、顧客(候補者)が離れていくのは当然の帰結である 。
多くの企業が陥る最大の誤解は、「選考フェーズが進めば、候補者の志望度も比例して高まる」という思い込みである 。 現実は逆である。選考が進み、内定が近づくほど、候補者の心理は不安定になり、迷いは深くなる。
こうした「意思決定のボトルネック(不安や疑問)」は、プロセスの後半になるほど増幅する 。 それにもかかわらず、企業側が「最終面接まで来たのだから、入社意思は固いはずだ」と高を括り、事務的な対応に終始すれば、候補者は土壇場で競合他社を選ぶことになる。

以上の構造を踏まえ、本稿における「採用活動におけるプロセスマネジメント」を次のように定義する。
プロセスマネジメントとは: 候補者の心理変化(意思決定プロセス)を主軸に置き、その変化に合わせて自社の動きを動的に最適化することで、「候補者を迷わせず、選ばれる状態をつくる」ための対人行動技術である 。
従来の採用管理が「自社のタスクを管理すること」であったのに対し、プロセスマネジメントは「相手(候補者)の意思決定を管理(支援)すること」に主眼を置く。
採用が営業活動である以上、そこで求められるのは「待ち」の姿勢ではなく、積極的な「介入」である。 候補者の心が揺れる瞬間、競合他社が動く瞬間、その予兆(サイン)を見逃さず、プロセス側から働きかけることこそが求められる 。
このように、相手の動きに合わせて自らの振る舞いを変える「動的変化対応」こそが、プロセスマネジメントの実体である 。 美しい計画を守ることには価値がない。泥臭くとも、変化する現実に食らいつき、候補者の心を動かして初めて、採用という成果は生まれる。
次章では、このプロセスマネジメントの視点が欠如している場合に、企業が陥りやすい典型的な「失敗のパターン」について詳述する。
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