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労務コラム健康経営アドバイザー資格取得に向けて“初めに覚えておきたい”健康経営の専門用語4選

健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することで「企業の持続的な成長」を図るための経営戦略のひとつです。健康経営に取り組むことで、従業員の健康状態を改善し、生産性の向上や企業価値の向上などのメリットが期待できます。健康経営に取り組む企業は、従業員の健康管理をコストではなく投資として捉えることが重要です。

企業が従業員の健康増進に投資していることは、応募者にとっても、従業員にとっても魅力の1つとなります。安心して働ける、長く働きたいと思えることが、従業員の帰属意識や労働意欲を引き上げ、それが生産性向上にもつなげられるからです。

当社では、昨年「WELL CORP:健康と安心を育み未来を創る労務管理」というビジョンを発表しました。これを受けて、弊社では社員の健康経営アドバイザー資格の取得を積極的に推進しています。

そこで今回のコラムでは、私自身が資格取得の過程で理解した、資格制度の概要と健康経営アドバイザーとしておさえておきたい健康経営の用語を4選「アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム」「ワークエンゲージメントとワーカホリック」「ウェルビーイング」「ナッジ」をご紹介いたします。

健康経営アドバイザー資格制度とは

健康経営アドバイザーは、企業で働く人たちの健康を守り、健全な経営を目指す取り組みを支援するために、経済産業省、厚生労働省、東京商工会議所などで検討され、平成16年度から創設された資格制度です。

健康経営アドバイザー |東京商工会議所 (tokyo-cci.or.jp)
https://www.tokyo-cci.or.jp/kenkokeiei-club/adviser/

健康経営アドバイザーは、健康経営に取り組む企業において指揮や推進を行います。アドバイザーとして健康経営の必要性を伝え、自社内の健康経営への取り組みに必要な情報を提供し、健康経営の実践へのきっかけを作る普及推進の役割が期待されています。具体的には、企業内での健康経営に関する企業の課題を洗い出し、方針や戦略の策定をサポートし、経営者や従業員に健康経営の重要性を説明し、理解を深めるための教育や情報提供を行います。従って、企業にとって健康経営の推進に欠かせない存在と言えます。

健康課題というと、一般的には従業員個々人の健康(肥満、メタボリックシンドロームなど)や習慣(運動習慣の減少、喫煙者が多い)といったことがあります。健康経営アドバイザーは、健康診断の結果や社内アンケートなどを実施し、従業員が抱えるこれらの健康課題を把握し、解決していきます。一例として従業員向けの健康セミナーを開催するといったことが挙げられます。また、スマートフォンのアプリなどで健康管理(毎日の体重や血圧の計測結果の記録、歩数測定)を推奨していくことも良く取り入れられています。精神的なストレスを解消することも重要な解決策として検討しなければなりません。

健康経営への取り組みを始めるなら、組織としては「健康経営優良法人」の資格取得をおススメしておりますが、健康経営の旗振り役となる従業員には「健康経営アドバイザー」の資格取得からはじめると、担当者の理解の促進に役立つでしょう。

1) アブセンティーイズム ・ プレゼンティーイズム

アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムという言葉を聞かれたことはありますでしょうか。これらは、いずれも体調不良による労働生産性の損失に対する考え方です。それぞれの定義は以下の通りです。

  • アブセンティーイズム

    何らかの病気により従業員が実際に会社を休んでいる状態

  • プレゼンティーイズム

    出勤はしているものの体調がすぐれないために生産性が低下している状態で、ストレス等による精神的な症状、アレルギー症状(花粉症など)があると、仕事に集中することができず、労働生産性が低下し、結果的に企業の損失が発生している状態

欧米を中心とした多くの研究によると、プレゼンティーイズムによって企業も見えない労働損失(生産性低下による経済的損失)が発生しており、その額は医療費や休業補償の額よりも大きいとされています。

つまり本来の能力やパフォーマンスを十分に発揮する上で、心身ともに健康でストレスのない環境を実現していくことが重要ということです。特に若い世代は無理が利くことから、病気で休むというリスクは低いものの、プレゼンティーイズムによる損失割合が高いとされています。

従業員の健康状態や仕事へのモチベーションは企業の生産性に大きな影響を与えます。企業は健康経営を推進し、従業員の健康と幸福を重視する必要があります。

健康関連コスト 割合(%)
医療費 15.70
傷病手当金 0.90
労災給付金 1.00
アブセンティーズム 4.40
プレゼンティーイズム 77.90

参考:経済産業省「平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業、健康経営評価指標の策定・活用事業」

2) ワークエンゲージメント ・ ワーカホリズム

健康関連のコストとは逆に、ワークエンゲージメントという概念があり、以下の3つが揃った心理状態を指します。

  • 熱意:仕事に誇りややりがいを感じている
  • 没頭:仕事に熱心に取り組めている
  • 活力:仕事から活力が得られていきいきとしている

ワークエンゲージメントが高い人はストレスが低く、パフォーマンスが向上することが実証されており、メンタルヘルス対策としても注目されています。

健全で働きやすい職場環境を実現し、活性化させていくことは、生産性の向上には欠かせない要素です。従業員の健康を気遣い、一人ひとりを大切にしてくれる会社としての魅力を高めることで、従業員の定着率の改善につなげることができます。

なお、ワークエンゲージメントと関連する概念としてワーカホリズムというものがあります。活動水準が高く、仕事に多くのエネルギーと時間を注いでいる点ではワークエンゲージメントと共通していますが、「脅迫的に」働くワーカホリックな人は仕事で得ている充実感が低く、ワークエンゲージメントの高い人に比べて、仕事への対峙が否定的になります。

従って、企業として施策を行い高めていくべきは、ワーカホリズムではなく、ワークエンゲージメントであると言えます。ワークエンゲージメントが高い従業員は、自己啓発意欲、創造性も高く役割以外の行動にも積極的になるなど、総合的にも良好なパフォーマンスを発揮します。

健康な状態であれば、自身の仕事に集中し、より良いパフォーマンスを発揮することが可能となります。そのため、健康経営の推進はワークエンゲージメントの向上に直結すると言えるでしょう。

3) ウェルビーイング

ウェルビーイングという用語については、これまでに見聞きされたことがある方も多くいらっしゃるかもしれません。ウェルビーイングとは身体的、精神的、社会的に良い状態を意味します。

幸せな従業員は、不幸せな従業員よりも創造性が3倍、生産性が3割高く、欠勤率や離職の割合が低いなど、多くのメリットが明らかになっています。経営理念の中にも積極的に取り入れ、「全社員の物心両面の幸福」、「幸せを量産する」、「我が家を世界一幸せにする」といった理念を掲げている企業もあります。

人が幸せと感じる因子としては、お金、物、地位や名誉などが挙げられますが、これらによる幸福感は長くは続かず、一方で心身的、社会的に良好な状態が保てれば、幸福感が長続きするという研究結果もあり、

  • 自己実現と成長
  • つながりと感謝
  • 前向きと楽観
  • 独立と自分らしさ

といった因子が挙げられています。

また、従業員が幸せに働くためには、自己裁量、自己成長、リフレッシュ、他者貢献、他者承認、チームワークなどの因子も重要であるという分析結果もあります。一方で、不幸せの因子としては、オーバーワーク、不快空間、報われない、協働不全、疎外感、ハラスメントなどが挙げられます。

4) ナッジ

最後にご紹介する健康経営の関連用語はナッジです。自発的な行動を促すきっかけを提供する手法で、コロナ禍で急速に普及したと言われています。

企業は従業員の行動を促すために、研修や情報提供による知識付与や啓発、補助金などのインセンティブ、社内規則によるルール化といった取り組みを行ってきましたが、モノにつられて行動する、強制されないとやらないということでは自発的な取り組みとは言えません。対するナッジは、人間の行動や意思決定の特性に着目し、一定の選択の自由を保障しつつ望ましい行動を後押ししていきます。

例えば、人間は面倒だと感じると直感的に行動せず後回しにする傾向があることや、商品やサービスの選択肢を3段階にすると真ん中のものを選択する(極端な選択を避けて無難なものを選ぶことで失敗しないようにする)傾向が高いことが分かっています。
こうした行動特性を理解して望ましい行動をしやすくしていく(そっと後押しする)仕組みや手法であるナッジが、昨今注目され始めたキーワードの1つです。

従業員に健康的な行動を選択するよう働きかけていくことで、健康経営の推進につなげることができます。

他にもSDGs、サスティナブル経営、食育、心理的安全性などのキーワードがありますので、機会があればまたご紹介させていただきます。

まとめ

当社では、従業員自身の心身的な健康だけではなく、労働環境の健康を実現していくために、企業に対して健康経営の必要性を伝えてまいります。「健康経営優良法人資格取得サポート」サービスでは、健康経営アドバイザーの資格を有するプロが、お客様に積極的なご支援ができるよう、さらに知見を深めて伴走いたします。サービスの詳細資料をご希望の方は、下記よりどうぞお気軽にお問い合わせください。

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