Leggenda

Leggenda

×

全国の人事パーソンへのメッセージ

人事部長の想い切りトーク

Vol031想い切りトーク

答えは社内にはない。 どんどんコミュニティに出ていこう!

取材日: 2022年12月5日

  • 株式会社Jストリーム
  • 執行役員管理本部人事部長
  • 田中 潤氏

※会社名・役職等は取材当時の名称を掲載しております。

日本初のストリーミング配信会社としてスタートしたJストリームは、動画配信のスペシャリストとして業界をリードし、コロナ禍が追い風となり、社員数は300名から400名へと拡大した。同企業の人事責任者である田中潤氏は、日清製粉株式会社、株式会社ぐるなびで培った人事経験をフル活用し、組織の成長とともに、Jストリームに人事機能を根付かせてきた。日経産業新聞でコラムを掲載するなど、ビジネス、人事業界においてオピニオンリーダーとして活躍する田中氏に、変化の多い現代社会において、人事がどうあるべきと考えるのか。話を伺った。

PROFILE営業、人事を生き生きと働く。
眠れない夜もあったけど、大変って思わない

  • これまでのキャリアについて教えてください。

    新卒で日清製粉に入社しました。メーカーに原料として業務用小麦粉を販売する営業担当としてキャリアをスタートさせました。営業相手は地域の中小企業の経営者の方が多く、会社の代表として一つの担当エリアを預かるのは、一国一城を任されたような気分で仕事していました。おかげで20代ですがかなり腹が座って、そのときの7年間で仕事のベースを身につけました。

  • 営業から人事への転換ポイントは何だったのですか?

    日清製粉で働いていたとき、自己申告でたまたま人事部を希望して提出したところそれが叶いました。人事部に異動となり採用担当者になったのです。採用は外に開かれている点で、営業に近い感じがして、楽しく生き生きと仕事できました。その後、人事制度の企画ラインに部内異動することになり、日本生産性本部の経営アカデミー「人事労務コース」(当時)に通うことになったんです。そこでは、10数社の人事担当者が集まって、1年間「課長」の研究をしたんですが、いろいろな会社の悩みや課題を聞いているうちに、自社へのヒントが得られました。人事って実に外に開けた仕事なんだと実感した瞬間です。後に人事シェアード・サービスの責任者になったときも、給与・社会保険担当者同士の会をやると、やはりここでも1社では思いつかないような、いろんなアイデアが出てきて面白いものになりました。ダイバーシティでも人材育成でも採用でも同じです。社内で考えていても超えられない壁を、複数の企業で相談することで、いっきに超えてしまう。そんな面白さを経験し続けてきました。

  • 営業や人事の仕事を振り返って、大変だったことはありますか?

    それが、振り返ってみると、成功とか失敗とかあまり思わないんですよね。嫌なことは忘れやすい上手な性格なのかもしれません。頭にきたことや眠れない夜もあって、人からみれば修羅場みたいなこともいくつもあったと思うのですが、終わっちゃうとあまり気にならなくなります。
    修羅場という言葉はあまり好きではなく、それを振り返るのも年寄りじみて嫌です。何があっても大変なことも含めて「仕事はめちゃくちゃ楽しい」と声を大にして言いたいですね。それがビジネス界の先輩としての責務でもあると思っています。

MISSION 今は採用が一番大事

  • Jストリームに転職してからはどんな人事施策をとられてきたのですか?

    Jストリームは、僕が入社した当時の従業員数は300名弱で、まだまだ十分に成熟した人事機能ができていないといってもいい状態でした。今は400名ほどまで増えていて、この成長過程で人事機能の成長も当然に必要になってきて、僕はその人事機能を創り上げて根付かせることがミッションです。もっというなら僕がいなくなっても続くような仕組みを作らなくちゃいけないと思っています。
    入社してから取り組んできた施策でいうと大きく3つあって、1つは採用活動です。人材がビジネスを左右するので企業の成長のためには採用が優先課題。昨年から人事に課制を敷いて、1課、2課、3課とあります。普通の会社では人事制度をやるのが1課なのでしょうが、Jストリームでは1課は採用をやる課にしました。そのぐらい僕らの組織では採用が重要だとアピールするためです。採用は社内の各部署との連携が命。幸いこの会社では人に対する関心がある人が多いので助かっています。
    人材力を高めるためには、採用すればいいというわけではありません。2つ目としては、人材育成です。僕がもっとも思い入れのある分野でもあるので、いろいろとユニークな取り組みを進めています。
    もう1つの施策としては、人事制度の改定です。入社してすぐにフレックス・テレワーク・副業制度をつくり、制度の説明会をやりました。テレワーク制度は、その後コロナがきたのでちょうどよいタイミングでした。その後、賃金制度、評価制度についても一新しています。ただ、人事制度は常に環境や戦略にあわせての吟味、見直しが必要なので、まだまだテコ入れしていきます。

  • 必要な人事施策を次々と打ち出されてきたわけですね。その中でも会社にとっての人事部のあり方について思うところはありますか?

    社員に、「ここに相談に来てみよう。相談に行く意味がありそうだ」と思ってもらえる人事部でありたいです。社員からの相談は人事部にとって貴重な情報源でもあります。僕はずっと「日本一敷居の低い人事部」になることを目指しています。何かあった時とりあえず人事に相談してみようと思う社員がどれだけいるかというのはすごく大事だと思っています。
    何か新しいことをやるために社員にヒアリングをしますってよくあるじゃないですか。あれは、つまり日頃から聞いていないことの表れだと思います。取って付けたようなタイミングでヒアリングする、なんてことをするよりは、切実な社員の声を日常的にどれだけ聞いているか。集めた声を統合して施策を考えたり、社員の今の姿を経営にきちんと伝えるのが人事の基本的な役割かなと思っています。

  • では、どうやって「相談しやすい人事」を作っていけばよいでしょうか?

    普段から人事部に相談してもらうためには、まずこちらに関心をもってもらうしかけを作っていくことです。
    例えば、僕がJストリームに入社した頃、NO残業デイを毎週水曜日に行っていたんですね。それで、人事部は水曜日になると「今日はNO残業デイです。早く帰してください」と言って夕方見回りしていました。見回りはいいのですが、実際、現場としてはしらけるじゃないですか。残業したくてやってるわけでもないし、忙しいから残業してるのに……って。
    「残業しないように」とストレートに発信するだけでは相手には届かないわけです。そこで、仕事の生産性を上げるTIPSや会議を短くするコツなどをパワーポイントにまとめてNO残業デイのメッセージとともにメールで発信しました。
    すると何人かの社員が返信をしてくれるようになっていきました。「もう少し詳しく教えてください」といったメッセージをもらったりして、そこから対話が生まれていきました。こういう対話から少しずつ人事部の存在が伝わるのだと実感しました。「人事部、期待できそうだな」という期待感の醸成が何よりも大切です。

MESSAGE 答えは社内にない。コミュニティに出よう!

  • 田中さんの20代から現在までのお話を伺っていると、「田中さんだからこそ為せること。私でも同じようなことができるのだろうか……」と不安に思う人事パーソンも多いかもしれません。そうした人事パーソンにアドバイスやエールをいただけますか?

    人事はあくまでも経営のサブシステムです。あなたがやりたいことは、今、会社がやるべきことなのか。それを見極め、やりたいことをしっかりと言語化していくことが大事です。よくあるのが、1on1が流行っているからとか、勉強したことをすぐに導入したくなるというのがあります。でも、それは本当に会社に必要なことなのかを見極める力が必要です。
    そのためには、普段から自分の視座をどれだけ上げていけるかです。経営と同じ目線まで上げていければいいですけど、まずは現場の課長と同じぐらいの視座を持ってほしいです。相手が見ている景色を想像して理解し、そのうえで、こうじゃないですかと提案していくんです。カウンセラーの仕事なんかもそうですが、カウンセラーも相談者と同じ景色を見ていかないと距離が縮まりません。相手と同じ景色を見たうえで、勉強したことを当てはめていくとよいと思います。最近の若い人たちを見ていると、相手と同じ景色を見る想像力をきちんと持っている人も多いなと感じるので、年齢はあまり関係ないかと思います。
    そして、「答えは社内にはない」ということを肝に銘じることです。社内に答えがあるなら、それ、もうできているはずなんです。社内で悶々と考えているよりは、社外の人と意見を出し合ったり一緒に考えられるようなコミュニティにどんどん出ていくとよいと思います。1社で考えるつまらなさを抜け出せたらそこに面白さがあります。そして、コミュニティに出ていくと、今度は作りたくなるんです。そうなったら、人事という仕事が自分の天職になっているはずです。
    何かあれば、いつでも相談に乗りますから、僕でよろしければいつでも言ってもらえれば……(笑)

想い切りトーク一覧に戻る